NGSデータ解析まとめ

サカナ研究者の手探りNGS解析(おもに進化生物学)

WGSデータの参照ゲノム配列へのマッピング (3): ヒトゲノム-リファレンス配列(GRCh37 or GRCh38)のダウンロード

2015-08-05

ヒトゲノムのリファレンス配列は、GRCh37またはhg19と呼ばれるデータセットがよく使われています(2013年12月以降は、GRCh38 (hg38)が最新のようです)。

GRCh37(またはGRCh38)は、UCSC Genome Browserのページからダウンロードできます。

hgdownload.soe.ucsc.edu

UCSC Genome Browser -> Genome -> Downloads とメニューをたどっていくと、このページに行きます。このページの下の方に"Human genome"というカテゴリがあるので、そこからFull data setをクリックすると、ダウンロードのページに移動できます。

ここでは、"chromFaMasked.tar.gz"をダウンロードします(GRCh37の場合)。展開すると各染色体ごとのfasta fileの入ったフォルダができます。

(2015-08-06追記)あとでVariant Effect Predictorを使う場合は、対応するリファレンスゲノム配列がGRCh38.p3なので、こちらを使用する必要があります。

WGSデータの参照ゲノム配列へのマッピング (2): データのダウンロード

2015-08-06

まず最初に、マッピングを行うNGSのサンプルデータを入手します。

このデータを使用します。
HapMapで使用されている、東京に住む日本人のデータになります。Illumina HiSeq 2000で読まれたデータ(ペアエンド)で、.sraフォーマットで8.9GBあります。詳しくはこのURLも参照して下さい。

データはこのFTPサイトに置かれています。Firefoxなどのブラウザなら、直接FTPサイトからダウンロードできます。Safariを使用している場合は、直接FTPサイトに接続できないので、ターミナルからftpコマンドを使って接続します。

以下のようにします。

(1) まず、データをダウンロードしたい(自分のMacの)ディレクトリに移動します。

たとえば、今日の日付フォルダ("150806"など)を適当な場所に作成して、cdコマンドでそのフォルダ内に移動します。

(2) ターミナルのシェルに、以下のように入力します。

ftp ftp://ftp-trace.ncbi.nlm.nih.gov/sra/sra-instant/reads/ByRun/sra/ERR/ERR251/ERR251633/

うまくつながれば、一連の文字が表示されたあとに

250 CWD command successful
ftp>

と、"ftp>"コマンド入力を受け付けるモードになります。

このとき、"ERR251633/"の最後の"/"を忘れると

221 goodbye

と表示されて、FTPサイトから抜けてしまうので要注意です。

(3) FTPサイトのディレクトリの位置を確認します。"dir"コマンドを使います。

dir

と入力して

229 Entering Extended Passive Mode (|||50373|)
150 Opening ASCII mode data connection for file list
-r--r--r--   1 ftp      anonymous 8862493705 Apr 10  2013 ERR251633.sra
226 Transfer complete

のように表示されればOKです。

データのダウンロードは、"get"コマンドを使って以下のように行います。

get ERR251633.sra

8.9GBあるので、データのダウンロードにはそれなりに時間がかかります(一晩くらいかかる)。

ちなみに、データのダウンロードが終わってFTPサイトを抜けるときは

bye

と入力します。

追記(LFTPを使う):"LFTP"が使えれば、こちらのほうが早いと思います。LFTPはこのサイトから入手できます。Mac OSの場合、packageを展開するだけでインストールできました。使い方は、コマンドをftpからlftpにするだけで、あとは同じです。

WGSデータの参照ゲノム配列へのマッピング (1): 解析の概要

2015-08-06

今回は、NGS (Illumina HiSeq) によって配列決定されたヒト全ゲノムのデータを、ヒトの参照ゲノム配列にマッピングします。ここでの目標は、以下の3つです。

1. BWAを用いて、NGS readsをヒトゲノム参照配列にマッピングする
2. SNP情報を.vcf fileとして抽出する。Variant Effect Predictorを使ってアノテーションを付ける
3. 遺伝子の塩基配列を得る。各遺伝子にアノテーションを付ける
4. NGSで決定したヒト個体のゲノムの塩基配列をFASTA形式で得る

以下のエントリで、それぞれの作業について考えていきます(次回へ続く・・)。

RNA-Seqデータを用いた系統解析 (2): Reference FASTA fileの作成(Trinityを使用)

以下のエントリーの続きです(じつに96日ぶり!)。

RNA-Seqデータを用いた系統解析 (1): 解析の方針 - NGSデータ解析まとめ

非モデル生物で、de novoに配列決定したRNA-Seqデータを系統解析に使用するには、いくつかのアプローチが考えられます。たとえば

(1) すべての種のデータをde novoでアセンブルして、共通のcontigを使って系統樹を書く
(2) 特定の1種でRNA-Seqデータをde novo assembleして、その種で作成したcontigsをリファレンス配列にして、他の種のデータはそのreference contigsにマッピングする。全種でmappngされたcontigで系統樹を書く
(3) 特定の1種で全ゲノム配列を決定し、それをreferenceにする

このエントリでは(2)のアプローチを取ります。(2)の利点は、de novo assembleが1回でいいので、計算時間が短縮されることと、orthologの同定が比較的容易であること(あとで説明します --> 別エントリ)、系統解析に使用する種がある程度近縁な場合は、効率よくデータを得られること、などがあります。あと、全ゲノム決定(3)が必要ないので比較的手軽にできる(コンピュータの計算能力が少なくて済む、経済的?であること)のも、現時点(2015年7月)では利点です。

一方、欠点としては、系統解析に使用する種があまり近縁でない場合、mappingがうまく行かない、または効率的にデータが取れない、ということがあります(このような場合、(1)を使う必要があります)。

1. .sraデータをgetする

このサイトから、まずは

X. birchmanni (SRR751378)
X. gordoni (SRR767711)
X. maculatus (SRR767714)
X. mayae (SRR767715)
X. xiphidium (SRR767782)

のデータを入手して下さい。.sra fileを入手したら、SRA toolkitの"fastq-dump"コマンドを使って.fastq fileを作って(展開して?)下さい。すべてsingle endになっています。

2. ReferenceとなるFASTA fileの作成

注意!:ここでの解析には、Linuxで動くコンピュータが必要です。Trinityを使ってde novo assembleを行うので、メモリは(できれば)128GB以上欲しいところです(可能なら256GB)。

参考URL: Trinity - 井上 潤
Trinityの前処理と動かし方については、OIST井上さんのこのページをほとんど参考にしています。

ここでは、X. birchmanni (SRR751378) のRNA-Seqデータを使用します。大体FASTQ fileで6.96GBあります。

(1) DynamicTrim.plによるデータ精度の評価、low quality readsの除去

まず最初に、FASTQ fileに含まれるqualityの低い配列を除きます。そのためのソフトとして、まずSolexaQAをダウンロード・インストールして下さい。

Shellで以下のコマンドを実行します。

DynamicTrim.pl SRR751378.fastq -h 20 &

(2) LengthSort.plによる短すぎるreads (<50bp)の除去

Shellで以下のコマンドを実行します

LengthSort.pl SRR751378.fastq.trimmed -length 50

(3) Trinityによるde nove assemble

Trinityは、イルミナ社のNGSによるRNA-Seqデータのde novo assembleに特化したassemblerで、比較的短いリード(100bpなど)を得意としているようです。結構頻繁に更新されるので、時々URLをチェックする必要があります。現在は、Web上でも実行できるようです(Linuxがない人は、こちらを使うのも一つの方法です)。

Trinityのダウンロード・インストールはURL参照して下さい(普通は難しくないです)。

とりあえず実行します。以下のコマンドを実行します。

Trinity --seqType fq --single SRR751378.fastq.trimmed.single --JM 200G --CPU 12

オプションの説明:

--seqType : sequence fileのタイプ(FASTQの場合はfq)
--single : single end readsを使用する場合 そのあとに.fastq file名 ペアエンドの場合は--left (seq1) --right (seq2)
--JM : 使用する最大のメモリ容量 // 100G-200Gに設定(使用するコンピュータのスペックによる)
--CPU : 使用するCPUの数(使用するコンピュータのスペックによる)

計算時間は使用するコンピュータの性能にもよりますが、このデータだと、私が研究室で使用しているLinux machine (2.1GHz x 12 core, 256GB RAM)で、大体24時間くらいでした。

計算がうまくいくと、outputとして複数のファイルを含むフォルダ (trinity_out_dir)ができます。

次のエントリに続きます(次は、Trinity結果の整理、reference用のFASTA fileの作成)。

MiSeqデータのMHC領域へのマッピング(17):RによるVCF fileの操作 (3): SNPのゲノム上での位置と、対立遺伝子頻度との関係をグラフ化する

2015-06-22

3. 各SNPのゲノム上の位置と、allele frequencyとの関係をグラフ化する(散布図の作成)

各SNPごとのallele frequencyを求めたので、ゲノム上での各SNPのallele frequencyの分布を視覚化してみます。ここでは、Rの"plot"関数を使用します。

まず、以下のようにコマンドを入力します。

plot(MHC_test4_freq[,2],MHC_test4_freq[,11],pch=20,cex=0.5,col=4)

plot関数は、引数の1番目(MHC_test4_freqの2列目)と2番目(MHC_test4_freqの11列目)の散布図を作ります。

この状態では、6番染色体のかなり広い範囲でのSNPsのallele frequencyがplotされているので、範囲を絞ります。たとえばHLA-Aの位置はchr6の29942470-29945884なので、この範囲に絞ります。この場合、xlim=c(範囲開始, 範囲終わり)というオプションを指定します。

#位置29942001から29946000までを表示
plot(MHC_test4_freq[,2],MHC_test4_freq[,11],pch=20,cex=0.5,col=4,xlim=c(29942001,29946000))

その他のMHC (HLA)遺伝子の位置はこちら

参考URL:
plot関数の基本的な使い方:
R言語で統計解析入門: plot()関数を使った散布図の作図体験 梶山 喜一郎
plot関数のオプションなど:
http://cse.naro.affrc.go.jp/takezawa/r-tips/r/53.html