NGSデータ解析まとめ

サカナ研究者の手探りNGS解析(おもに進化生物学)

生き物を観察することと、世界をより深く「見る」こと

忙しかった2022年もあと2日で終わるけれど、今日も研究室に来て仕事をしている。

今年読んだ本で、一番感銘を受けたのは「図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか?」という、自然史の研究者による、生物の「同定」についての本だ。といっても難しい専門書ではなく、生き物に興味のある一般の人にもわかるように「生物の種を同定して、分類する」ということを解説した本である。

この本の中では、いくつかの分類群(蜘蛛やシダ植物など)を例に、それらの生き物に詳しい人たちが「何を見て」種を区別しているのか、ということが紹介されている。そうした例を通じて、生物を分類する「目」がどのように作られるのか、がとてもわかりやすく理解できる。

私自身は主に淡水魚を専門にする自然史・進化の研究者であるが、分類は専門ではないし、特に生き物に詳しいわけではない(ていうか、生き物に関しては、とてつもなく詳しい専門家の友人知人がたくさんいるので、とても自分が生き物に詳しい、とか言えない)。それでも、自分が対象にしている淡水魚であるタナゴ類については、20年くらいは野外で採集したり研究しているので、例えば九州に分布する7種くらいのタナゴと(それらの雑種を)ある程度区別することはできる。目ができているのだ(たとえばTanakia属の2種(ヤリタナゴとアブラボテ)は、背鰭の鰭膜上に紡錘形の黒斑があることで他の属と区別できる)。でもそれ以外の魚はまあ「科」くらいまで分かればいい方で、何か魚を捕まえた時に、それがコイ科か、サケ科か、ドジョウ科か、くらいはわかるけれど、たくさんいるドジョウの種を的確に見分けることのできるような目は持っていない。

まあ、そんな半端者である私でも、特定の生き物のグループに興味を持って、野外や図鑑での観察を通じて、それらの多様性を時間をかけて理解していく、というステップはとても楽しいものだし、もっと生き物に詳しくなって、自然に対する「解像度」を上げていくことで、よりフィールドが楽しくなるだろうな、ということに、本書を読んで改めて気付かされたのであった。

ちなみに私も、著者と同じように幼い(4歳)の息子がいて、彼も結構生き物は大丈夫そうなので、一緒に公園とかで昆虫を捕まえて遊んでいる。せっかくなら図鑑も買って、一緒に昆虫に詳しくなりたいな、と思っていたところ、ちょうど今年は、とても良い図鑑が出版された!

というわけで早速購入し、息子と一緒に楽しんでいるところであります。

基本的には、私は一人のアマチュア自然愛好家であるが、一応プロの生物学者でもあるので、その視点で図鑑を見るけれど、はっきり言ってこの図鑑最高である。昆虫で、生体写真のみで、この種数を網羅しているのはヤバイ! いくら専門外でも、それはさすがにわかる。この図鑑、一体どれだけの労力がかかっているんだ・・・

来年も、願わくばもっとフィールドに行って、いろんな生き物を観察しながら、世界に対する解像度を上げて行ければなあ、と思います(おわり)。